個人事業主としてスタートした後、税務メリットや信用力向上のために法人化を選ぶ方も増えています。小規模で運営される法人、いわゆる「マイクロ法人」は、従業員がほとんどいないため、経理や税務業務をオーナー自身で行わなければならないケースが多くなります。しかし、簿記知識がない状態で法人会計を始めると、複雑な仕訳や決算処理が大きな負担になります。この記事では、マイクロ法人の視点で、マネーフォワードクラウド会計を利用する際に簿記知識がないとつまずきやすいポイントを紹介し、解決策をお伝えします。
法人特有の「資本金」の処理
躓きポイント
法人設立時に用意した「資本金」は、会社の財務構成の基本であり、マイクロ法人でも避けては通れない項目です。資本金は法人の資産であり、特定の勘定科目(資本金)で管理しなければなりません。しかし、簿記知識がないと「資本金」をどのように入力し、他の取引と区別するのか理解が難しくなります。
解決策
マネーフォワードクラウド会計では「初期設定」で資本金を入力する欄があり、ここで一度設定しておけば日々の会計処理に含まれることはありません。また、個人のお金と法人のお金を明確に区別するためにも、法人の銀行口座と資本金をしっかり連携させて管理することが重要です。
経費精算の範囲が個人事業主と異なる
躓きポイント
法人になると、経費精算のルールが厳格化され、個人事業主で許されていたものが法人では経費として認められないこともあります。例えば、自宅を事務所として利用する場合の「家賃」や「光熱費」など、プライベートとの共用分を正確に区別する必要があります。
解決策
経費精算の際は、法人と個人の出費を分けるように心掛け、法人の口座から支払うようにすることで整理がしやすくなります。また、マネーフォワードクラウド会計では、経費の入力時に「使途」や「用途」を細かくメモしておくと後々の税務調査で役立ちます。会計年度末に経費を確認し、プライベート支出が混在していないかチェックする習慣をつけましょう。
勘定科目の複雑さに戸惑う
躓きポイント
法人会計では個人事業主よりも使用する「勘定科目」が多岐にわたり、初心者にはハードルが高くなります。特に「旅費交通費」「交際費」「福利厚生費」など、法人特有の科目も登場し、どの科目に分類するか悩むことが多いです。
解決策
マネーフォワードクラウド会計には「勘定科目のサンプル一覧」があるので、これを参考にしながら取引を登録するとスムーズです。勘定科目を細かく分け過ぎず、なるべくシンプルに分類することを心掛けると、処理が効率化します。また、法人会計に関する簡単な勉強もしておくと、迷う場面が減るでしょう。
「役員報酬」と「給与」の区別がつきにくい
躓きポイント
マイクロ法人のオーナーである場合、自分への支払いとして「役員報酬」を設定する必要があります。しかし、役員報酬は「給与」ではなく、通常の人件費とは区別して管理しなければならず、また、月ごとに金額を変更することもできません。こうした違いが理解できないと、誤った設定をしてしまうリスクがあります。
解決策
役員報酬は定期的な金額でなければならないため、年間の金額を事前に計画して設定しておくと良いでしょう。マネーフォワードクラウド会計では「役員報酬」として設定する項目があるため、それを利用して給与と明確に区別しましょう。また、報酬の金額を変更したい場合は、税務署への届出が必要なことも覚えておくと安心です。
売掛金・買掛金の管理が複雑
躓きポイント
法人になると、取引先との支払いが「掛け(売掛金・買掛金)」で行われることが一般的になります。売掛金や買掛金の管理ができていないと、資金繰りに影響が出る場合もあります。しかし、簿記知識がないと「売掛金・買掛金」の意味や管理方法が難しく、現金ベースの記録に慣れているとつまずきやすいポイントです。
解決策
マネーフォワードクラウド会計では、売掛金や買掛金の設定も自動化されているため、取引の際に「掛け払い」を選ぶと自動で管理されます。取引先との支払条件や入金日を確認しながら入力することで、資金繰りも可視化されるため、積極的に掛け取引の管理を行いましょう。
年末調整や決算処理の理解不足
躓きポイント
法人の場合、年末調整や決算報告など、個人事業主とは異なる独自の処理が必要です。特に決算時には、未払金や前払費用などの「繰延べ処理」が必要となり、これを理解していないと混乱しやすくなります。
解決策
マネーフォワードクラウド会計には決算サポート機能があり、ガイドに従って入力することでスムーズに決算作業を進めることができます。もし難しい場合は、会計士や税理士のアドバイスを受けるのも一つの手です。また、事前に決算や年末調整に関する勉強会や講座を利用することで、全体像を掴むことができます。
法人税や消費税の設定ミス
躓きポイント
法人になると、個人事業主よりも税金に関する処理が複雑になります。特に「法人税」「消費税」など、複数の税金を計算する必要があり、設定を誤ると税務リスクが高まります。また、消費税の「課税業者」か「免税業者」かの判断基準も、法人設立時には理解しておく必要があります。
解決策
マネーフォワードクラウド会計には、法人税や消費税の設定が可能な機能があります。消費税の課税方法についても「税込・税抜」の設定を正しく行い、計上方法を自動化することでミスを防ぐことができます。また、消費税の税率や法人税の税率は定期的に見直されるため、システムが自動で税率を更新する点も活用しましょう。
固定資産管理と減価償却
躓きポイント
法人で使用する固定資産(パソコンや事務機器など)は、購入後に「減価償却」という処理が必要です。しかし、簿記知識がないと「減価償却費」や「耐用年数」の意味がわからず、資産計上が適切に行えないリスクがあります。
解決策
マネーフォワードクラウド会計には固定資産の管理機能があり、資産購入時に登録しておくことで、減価償却を自動で計算・記録してくれます。資産を購入する際には、耐用年数(税法で定められた資産の使用年数)を確認し、経費として計上することで、経理負担を軽減しましょう。
まとめ:マイクロ法人が会計ソフトを使いこなすためのポイント
マイクロ法人にとって、簿記知識がないまま法人会計を行うのは負担が大きいですが、マネーフォワードクラウド会計の自動化機能やサポート機能を活用することで、会計処理を効率化することが可能です。最初はつまずくことが多いかもしれませんが、日常的な会計処理を続けていくうちに理解が深まっていきます。また、会計や税務に関する基本的な知識を少しずつ学ぶことで、ソフトの使い勝手も良くなり、正確な会計処理が実現できるようになるでしょう。
法人化によって新たに必要となる項目や税務処理に対しては、なるべくサポートを活用し、必要に応じて専門家に相談することも検討すると、安心して経理業務に取り組むことができます。
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